10月12日(水) 金野純専任講師 「震災を通してみる日中関係:歴史と現在」

 

授業のはじめに、金野先生は、「震災があったで終わらせるのではなく、震災を物事を深く考える契機にしてゆくこと」の大切さを話された。例えば、東日本大震災では、死者・行方不明者が2万人を超えたが、日本では毎年3万人を超える人が自殺している。3万人の人が命を絶つという社会は一体どういう社会なのか、など、震災という1つの大きな出来事を、人生を考えたり、人生に影響を与えるように思考をする契機にしたいということを、岩手県出身の金野先生の1つ目のメッセージとして話された。

 

ご講義内容構成は以下であり、日中関係について、複数のデータや動画を織り交ぜながら、大変わかりやすく説明された:

 

1 日中両国の交流の深化と反目

2 震災を通した協力関係:四川大地震と東日本大震災

3 日中関係を難しくしているものは何か?

4 近代日本のアジア観と中国

5 毛沢東時代の断絶と憧れ

6 毛沢東時代後の日中関係の系譜―日本側

7 日中関係の系譜―中国側

8 日中関係の深化と軋轢の時代へ

9 震災を通した関係改善の限界―今後、何が求められるのか?

 

 

授業本題である、日中関係について、日本の外国人登録者数は2007年以降、中国人が1番多いが、中国人と日本人の互いの印象が良いとは言えないのが現状であることを説明された。そして、震災を通した協力が両国の関係に何らかの影響を与えるのかについて、四川大地震、東日本大震災への両国の支援、日中関係を難しくしている要因、日中の政治的関係等を述べながら、ご講義された。

 

2008年5月におこった四川大地震は、死者・行方不明者合わせて8万7千人にのぼり、中国は建国後初めて各国からの援助隊を受け入れた。日本は最も早く援助隊を派遣し、日本への評価は高かった。 日本の援助隊が遺体に黙祷する写真は記憶に新しく、作業の手を止めて遺体への哀悼の意を表した日本人に対して、多くの中国人が感動し、中国人の日本人のイメージを変えた。2011年3月の東日本大震災の際は、四川大地震に対する「お礼」として中国全土で支援の輪が広がるとともに、日本国内における日中の民間交流も表面化した。

 

震災後のインターネット世論調査では、日本へ支援すべきと答えた人の割合は83%であり、日本の印象が良くなったと答えた割合は47.3%であった。

 

このように、両国間のイメージが改善する出来事がありながらも、日中間の感情が良好とは言い難い理由について、金野先生は、日本人でも世代によって中国に対する親近感を抱く割合に相違があるということを指摘しながら、説明された。70歳以上、つまり中国との戦争体験のある世代のほうが若い世代よりも、中国に対する親近感を抱く割合が高い。これが意味することは、戦争体験のない世代は、相互イメージ、つまり、互いに対する作り上げられたイメージがあり、それが相手を理解することを阻む要因となっていることが推測できると語られた。それ以外に、1)互いの習慣や発想の違い、2)互いの無意識の前提条件(特に政治的な)、3)東アジアの序列的な秩序感覚(vs 西欧のBalance of Powerとは異なる感覚)が、日中関係を難しくしている要因として挙げられることも、説明された。

 

授業後半では、金野先生は、震災時の両国間の協力は二国関係を改善したものの、その持続性については期待できない、ということを、そして、今、私たちに求められるのは、1)「大人の」知的態度―日中関係の両義性を受け入れたうえで、現実的な選択を積み重ねること(マスメディアなどの「わかりやすい議論」で作られたイメージに翻弄されない)と、2)記憶の風化を防ぐ:「協力」記憶の蓄積―プラスの記憶を歴史の中に風化させないことが必要であるということを授業受講・聴講者への強いメッセージとして語られた。

 

以下、金野先生の授業配布資料である:

 

金野純先生リレー講義配布資料
金野純先生リレー講義配布資料.doc
Microsoftワード文書 48.0 KB

 

 

 

 


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