11月30日(水) 江口泰広教授 「企業のマーケティング活動と東日本災害」

江口泰広先生は、企業の社会的責任(CSR - Corporate Social Responsibility)について解説されながら、311日直後から現在における日本の企業による緊急および復興支援活動について、以下の項目に基づいて、ご講義された:

 

・企業の社会的責任

CSRの領域

CSRの戦略的意味

・緊急支援型CSR

・東日本大災害と企業経営

 

江口先生は、まず、CSRとは:

 

「企業が法律遵守にとどまらず、市民、地域及び社会等の企業を取り巻くステークホールダー(利害関係者)に利するような形で、自ら、経済、環境、社会問題においてバランスのとれたアプローチを行うことにより事業を成功されること」(経済産業省『2004年版通商白書』)

 

と、定義されたうえで、CSRが着目する7つのポイントをまとめられた:

 

①優れた製品・サービス

②納税

③文化・地域貢献

④法令遵守(compliance

⑤情報開示、説明責任(accountability

⑥環境問題

⑦人権擁護

 

先生は、「優れた製品・サービス」の生産・販売は、単なるprofit makingのためと誤解されがちであるが、このprofitは顧客を満足させてはじめて生じるものであり、顧客を満足させることができること自体が社会貢献であると話された。CSRは製品・サービスの提供という経済的役割をはじめ、社会貢献・支援活動といった社会・環境的役割まで幅広くカバーする。そして、そのような経済・社会・環境的役割を含めて、独自のブランド力・競争力を培っているのが、今日の企業の姿である。

 

お金がかかる社会貢献などは「コスト」として捉えられることも多いが、社会(ステークホルダー:企業の利害関係者)のニーズを満たしながら顧客の満足度を高めるということは、企業にとっては「投資」であるというように考える企業が多くなってきている。

 

次に、江口先生は、CSRが台頭してきた背景を説明された:

 

1.急速なグローバル化

2.欧州統合

3.企業統治

4.企業の不祥事

5.消費者行動の変化

6.NGO

7.ITの進展

8.社会的責任投資(SRI

 

 

世界の政治、経済が急速に変化してゆく中、企業がCSRを重んじる背景の1つに、「消費者の変化」があげられる。消費者は、製品の品質、性能、価格、サービスはもとより、人権、労働環境への関心を高めてきた。これを先生は、「消費者による企業の利潤獲得プロセスへの関心の高まり」という言葉で説明された。

 

授業の中盤で、江口先生は、企業の社会的責任と事業の収益性の両立を追求した企業の先駆けである「THE BODY SHOP」を紹介された。THE BODY SHOPはビジネスを社会変革に用いて、大成功をおさめてきたが、その取り組みは以下の5つのValueに基づいている:

 

AGAINST ANIMAL TESTING

   化粧品の動物実験に反対しています

 SUPPORT COMMUNITY TRADE

  公正な取引により、地域社会を支えています

 ACTIVATE SELF ESTEEM

  自分らしい生き方を大切にしています

 DEFEND HUMAN RIGHTS

  ひとりひとりの人権を大切にしています

 PROTECT OUR PLANET

  私達を取り巻く環境の保護に努めています

 

(授業配布資料より & THE BODY SHOP ホームページより)

 

このような価値にもとづいた企業としての行動、考え方、あり方が、顧客の注目を浴び、心をつかんだのである。

 

授業の後半で、江口先生はCSRの戦略的意味として、以下のポイントをあげられた:

 

1.ポジショニング:明確な倫理観、主義→ブランド構築・競争力

2.環境経営:環境対応→積極的保全

3.Quality of Process:利益の質、SCMSupply Chain Management

4.透明性(力):企業情報の質と量が信頼確保の源泉

5.人材確保:優秀な人材は魅力ある企業や産業に流れる

  →魅力ある企業⇒憧れの企業、尊敬できる企業

6.新たな企業価値創造⇒ブランド構築⇒競争力確保

 

江口先生は、企業は公器であり、corporate citizenであり、公明正大でなければならない。そうしてはじめて人々から信頼を勝ち取ることができ、この信頼の獲得こそが企業活動をするうえで、もっとも大切であると、述べられた。そして、市場は一人ひとりの顧客の心の中にあるととらえ、確固たる倫理観にもとづいて、自社の位置づけ(ポジショニング)をすることが重要であること。そして、さまざまな社会活動をしながらも利益を上げてゆくことが大切であり、そこから新たな企業価値創造へとつながってゆくとも、先生は、話された。

 

最後に、江口先生は、メディアではあまり取り上げられていない様々な企業の東日本への支援活動を紹介された。これらの取り組みが新たな未来づくりの契機となり、CSRは企業経営そのものであるということを話され、授業を終えられた。


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