12月8日(木) 武井彩佳准教授 「ドイツの脱原発」

 

武井彩佳先生は、日本とは異なるドイツの脱原発への取り組みがどのように行われてきたかを、ドイツの文化的背景を紹介しながら、考えてゆくと話され、授業を始められた。

 

武井先生は、まず、ドイツの脱原発の経緯を説明された。ドイツでは201010月にメルケル政権が、完全脱原発まで14年延長するという決定をした。メルケル首相は物理学者であり、野党時代には脱原発には慎重派であった。しかし、福島の原発事故後、専門委員会を立ち上げ、6月6日には、原発全廃を2022年までにすることが閣議決定され、7月31日には、「改正原子力法」(脱原発法)が発効した。

 

次に、先生は、脱原発への力が強い理由として、歴史的背景を説明された。ドイツでは「68年運動」が展開されたが、その担い手は、1946年~1953年生まれの学生であった。彼らは、反権力、反戦、ナチの過去の清算、つまり、父親(ナチ)世代との暴力的決別を掲げた。この時に活動的だった学生たちが、ドイツの環境政策に積極的に関わってゆくことになった。当時の学生運動は一定の成果をもたらした。しかし、政治の中心からでなければ、本当の改革がもたらされないことに気付き始めた彼らは、体制内の変革要素となるべく、政治活動をはじめ、1980年には緑の党が結成され、1983年に、初めての議席を勝ち取った。シュレーダー政権の外相であったヨシュカー・フィッシャーも68年世代の一人であり、緑の党に所属し、徐々に支持を受けてゆきながら脱原発への取り組みを強化していった。

 

ドイツの最初の原発は1969年に稼働し、1973年のオイルショックを受け、原発へ傾斜してゆく。しかし、70年代は、市民の反対運動も拡大していった。農民や学生を巻き込んだ草の根の反対運動は、しばしば原発関連施設の工事・建設を中止させた。最近では、フランスで再処理された放射性廃棄物が貨物列車でゴアレーベンの中間貯蔵施設に移送される際、市民数千人が線路の上に座り込んだりして、列車の運行の妨害をして、警察官と衝突、負傷者が出たニュースが日本でも流された。

 

脱原発が完全に決まるのは、1998年に誕生した「赤緑」政権、つまり、社会民主党と緑の党の連立政権時代である。政権は、以下、3段階の脱原発の取り組みをした:

 

  ①安全性強化+放射性廃棄物の施設内保存

  ②政府がエネルギー供給会社と話し合い

  ③損害補償なき脱原発を法制化

 

そして、2000年には、電力会社と合意が成立、2002年には、原発の耐用年数を32年とした「電力生産における原子力利用からの撤退のための法律」が施行された。

 

ドイツのこのような脱原発への取り組みが可能だった背景として、武井先生は、地政学、政治、社会、経済的等、複数の要因を挙げられた。ドイツは、国内では脱原発を進めながらも、フランスの原発新設にはドイツは出資しており、ヨーロッパの電力市場が国境を越えた単一市場であることからも、電力供給にドイツがさほど困ることがないことが大きな要因であることを説明された。そして、メルケル政権の決断は、福島の事故ももちろんであるが、2013年に行われる次期総選挙をにらんだ政治的打算(保守の牙城であったバーデン・ビュルテンベルク州に緑の党の州首相が誕生したことへの危機感)の存在も指摘された。

 

また、脱原発への取り組みは、下から、つまり市民の環境運動と、上から、つまり政府による政策の2つがあって、はじめて可能であったことも、武井先生は説明された。政策としては、1999年には環境税が導入された。これは汚染者負担の原則にのっとって、石油税、ガス税、電力税が新設され、企業に負担が求められた。この税収は、しかしながら、企業の社会保険料の補充にあてられるシステムとなっており、企業の負担補てんという循環を作り出している。そして、2000年に制定された「再生可能エネルギー法」によって、再生可能電力の、一定価格で20年間の買い取りが義務化された。1998年には電力事業が自由化されていたので、この法律によって、消費者による再生可能なエネルギー、つまり、クリーンな電気の購入の選択が可能となった(ドイツでは、太陽光やバイオ発電の設備投資へ助成金がでる)。

 

最後の要因として、「エコロジー=エコノミー」について、武井先生は話され、授業を終えられた。脱原発は、ドイツにとってビジネスチャンスでもある。2007年、再生可能のエネルギー関連の雇用者は25万人にのぼり、2020年には、環境ビジネスが100万の雇用を生み、自動車産業を抜いてドイツ最大の産業へと成長することが期待されている。

 


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